熊本地震が発生したのは4月14日午後9時過ぎ。明日で1週間経過しようとしていますが、未だに収束の兆しが見えられません。熊本の皆さんには1日も早い安寧が訪れますように祈るばかりです。
仙台での学校時代の同級生も被災地宇城市に住んでおられます。SNSで連絡はとれる状況ですが食料配布の偏重があるようで品物によっては全くない食材もあるとのこと。まず何より自宅で両手、両足を伸ばして休息を十分にとるという行為が損なわれています。ですので余震が一刻も早く止むことが避難している方々の一番の望みなのではないでしょうか・・・。
昨日、肺動脈血栓塞栓症(以下PEと記載)で亡くなられた方が居ると報道されました。
今回はPEに関する話題をお話しさせて頂きます。
肺動脈に血栓が入り込むと何故重篤な症状が現れるのでしょう・・・それは、ガス交換の場である肺には全身から集められた静脈血が心臓に集約され肺動脈(流れているのは二酸化炭素や老廃物などを含む静脈血)に流れ込むのですが、その血液中に大きな血栓が存在するとガス交換の為にどんどん細くなっていく肺の中の血管内に引っかかってしまいます。そうすると、そこから末梢の組織が壊死を起こし急激な異変が起きます。その異変とは①激烈な胸部痛 ②意識不明 そして命を落としてしまうことになります。原因となる血栓は主に下肢の深部静脈で起こることが殆どで特に腸骨静脈、膝窩静脈等で発生する遊離血栓(これが深部静脈血栓症(以下DVTと呼びます)と呼ばれます)が肺に運ばれて発症するのです。
なぜ、私が門外漢であるはずのPE、DVT??とお思いの方がいらっしゃるかと思いますが、実は股関節の手術はこのPE、DVTの発症高リスクグループに属しています。よって、整形外科領域における予防策として臨床に於いてはとても大きな比重をもつ合併症なので(ここでは疾患ですが…)理解と予防対策の履行が必須条件なのでした。
術後であれば①血中濃度をコントロールして血中D-dimmer値を参考に血栓溶解剤を使用する。②フットポンプ(A‐Vインパルス)、カーフポンプ(メドマー)で足底や腓腹筋群を刺激して血流速度を早くする試みを行う。③弾性ストッキングを装着して表在静脈を圧迫、相対的に深部静脈の絶対血流量を増やすことで血流スピードを速くする④足趾および足関節の自動運動(パンピング運動)で筋肉ポンプ作用を働かせ血流量を増やす⑤水分の摂取量1日2ℓを目標に摂取する⑥早期離床を促す
このようなDVT発症予防策を講じPEに至らしめないような工夫を行います。
いま被災地で出来ることは、運動と水分を出来る限り摂取することです。PE発症率は現在のところ男女差年齢はどの世代でも起こり得ます。発症してからの対策では生命の危険に冒されてしまいます。ですので予防が一番。一番効果的なのは歩く事です。継続して歩くことで血流スピードをあげましょう。しかし夜間はそういうわけにはいきませんので足趾の運動、足首ぐるぐる運動を積極的に行ってください。目安としては大きく左右ぐるぐるを200回カウントしてください。出来れば30分ごとに行ってください。水分はけちらないで摂取してください。お茶でも、炭酸でもまたみそ汁なども含めての1日2ℓです。動けない方は他動的な運動を施すことも有効ですが、股関節学会におけるとある報告では何も施さないものを1として、他動運動は2.5倍~3倍の深部静脈血流速度。自動運動は約6倍の血流速度に変化するとのデータもあります。ですので動ける方の場合は介助運動でいいですから足首運動を底背屈の繰り返しでもいいですから行う手助けをしてみましょう。
PE、DVTの徴候として足のむくみが問われていますが、むくむタイプのDVTは比較的怖くないといわれていますが、DVTによりむくんだ下腿に対するマッサージは禁忌です。弾性ストッキングによる適度な圧迫程度にしてください。発症した場合、エコーなどでしっかり調べて頂く必要があります。
これ以上、地震関連死を防ぐ手立てをご自身で行っていきましょう!!
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