~人工骨頭と人工関節の違い~

皆さんこんにちは中屋敷の多田です

今回は患者さまからご質問頂いたので『人工骨頭と人工関節の違い』についてお話ししたいと思います

 

先ず、関節を皆さん想像してみてください(股関節を例題にしております)

関節の構造は『ボール&ソケット』いわゆる受け側である❝寛骨臼❞と、頭である❝骨頭❞の形状になっています

いろいろな障害や病気また、骨折がありますので関節のどこに問題があるかによって人工関節か人工骨頭かを決めるのです(といいますか決まっているのです)。

 

お話しの患者さんは

転倒して大腿骨頚部骨折したので人工骨頭になりました

 

さて、そこでなんとなく疑問

一般的に骨折の場合、骨接合術ネジやプレートや芯棒を入れるようなくっつけるための手術でないのか?

それは・・・大方の頚部骨折は骨癒合しないからなのです(もちろん例外はありますよ)そのままにしておけば仮にくっついたとしても骨折なので長期安静は避けられない・・・大多数が高齢の方なので肺炎や褥瘡、その他廃用症候群や肺塞栓症の予防など安静期間に余病が出ないように管理が大変になりますし、患者さんのみならず家族の負担も計り知れません。挙句骨癒合しないで大腿骨頭壊死に陥るのでは踏んだり蹴ったり。

よって、人工骨頭を選択するわけです。

大腿骨近位部骨折で他に転子部骨折というのがありますが、こちらは骨癒合良好な部位なので『骨接合術』いわゆるガンマネイルやCHS,DHSといった軸を入れる手術が適応になります。

 

なぜ、人工関節でないの?

人工関節とは文字通り寛骨臼側である受ける側にも人工物としてソケットを設置するのですが、一般的な頚部骨折の場合、寛臼は障害を受けていませんので骨折した頚部から骨頭を抜去して頭の部分を挿げ替える形で挿入するわけです。手術自体も短く済みますしインプラントの部品点数も減るので都合がよい・・・というか、いじる必要のない正常な部分になので頭だけを換えるので十分なのです。

 

以下に写真を添付して解説を入れてみましょう

↓続く

こちらは股関節の人工関節です

国内、国外のたくさんのメーカーがあり形状にも特色がありますが、基本構造は同じです

大きく分けると

土台となる骨脆弱性がある症例の場合は補強のために骨セメントを併用するセメンティドタイプ(上段左端のアウターシェル、中段左のピカピカしたステム)

リーミング形成した股臼、大腿骨近位部髄内をラスピングした後にインプラントを直接打ち込むセメントレスタイプがあります。(上段中と右、中段右のザラザラしたステム)

一方こちらが人工骨頭のシステムです

構造はTHAのインプラントと似ていますが、骨頭の金属部分(アウターヘッド)のほかにポリエチレンライナー内のヘッド(丸い骨頭が入っているのがみえます)の二重構造になっています。昔は大きな頭だけのモノポーラ構造のため摺動面(いわゆる関節の接触しているくるくる動く場所)に負担が大きくかかり中心性脱臼(求心性マイグレーション)などの問題が起きたために新たに開発され中長期成績もすこぶる良好。現在はポリエチレンライナーの耐久性も向上し15~20年の耐久性があるといわれています。

 

高齢者の場合、長期臥床は合併症の危険性が高いため現在は早期離床をさせ3週から1か月で退院するのが標準でしょうか・・・いやもっと早くなっている10日から2週間ていう施設もあるらしい。低侵襲手術(MIS)を導入することで出血を抑えられるので自己血貯血も不要。すごいですね。

 退院後はリハビリ不要がほとんどですが、機能が低下することもあります(もともと機能低下があるのでそのためのリハは必要になる症例は少なからずお見受けしますが…)。動きが悪くなったとか力が入らないとか…etc…そのような症例もご相談ください。

人工関節は管理がとても重要です。入れっぱなしではなく定期的に検診を怠らないようにしましょう。

 あともうひとつ、虫歯はしっかり治しておきましょう。遅発性感染の元凶です。

 

患者さんがいない合間に書き連ねました。もしかして抜けているところもあるかもしれませんが悪しからず

(;^ω^)

では、さようなり~(^_^)/~